「小論文に強くなる」(轡田隆史)

俄然、書くことに勇気と希望が湧いてきます

「小論文に強くなる」(轡田隆史)
 岩波ジュニア新書

別に今さら小論文を書こうと思って
読んだわけではありません。
文章を書くことについて
論じている本を見つけると、
無性に読みたくなるのです。
それも、書く技術を
学ぼうというのではありません。
色々な経歴を持っている方々、
そして実際に書くことを
職業とされている方々の、
書くことについての考え方を知りたい、
そこから学びたいと
私は思っているのです。

その点、本書は「書く」ことについて
明確に論じています。

「日々の暮らしのなかで、
 実際に文章を書くことのない人も、
 書く必要もない人も、
 書くつもりもない人も、
 精神のなかでは、
 いつだって文章を
 書いているのである。」

つまり、「書く」ことは「考えること」と
同一なのだということです。納得。
考えるという作業は、
無意識のうちに心の中で
文章を紡いでいることなのですから。
そうなると、四六時中
何かを考えている私たちは、
実は常に「書いている」ということに
なるのです。

「人間にとって、
 『書く』行為とは
 『生きること』そのものなのだ。」

だとすると、文章を書くという行為は、
生きることの
記録ということになります。
このブログもまた、
私の生きていることの記録と考えると、
書くことに張り合いが出てきます。

「『文章を書く』という作業は、
 歴史と文明に参加する作業なのだ。」

ここまで言っていただくと、
俄然、書くことに
勇気と希望が湧いてきます。
すでに50を越えた私でさえ
気持ちが昂ぶるのですから、
これから小論文を学ぼうとする
高校生の若者たちならなおのこと
奮い立つものがあるはずです。

さて、ここまですべて
第1章の内容です。
本書の大切なことは
総じて「第1章 文章を書く意味」に
凝縮されているのです。
第2章以降は、
そこでふれたことを一つ一つ
実際の小論文作成に向けて、
具体例を含めて解説しているのです。

おそらく、
書店の学習書コーナーをあたれば、
もっと小論文作成のテクニックを
解説した参考書はあると思います。
しかし、大切なのは
「書く」ことをためらっている人が、
「よし、自分も書いてみよう」と
思えるかどうかなのです。

本書は、書こうと志す、
書く気持ちを高める、
書くことの意味を再確認する、
そうした目的にかなう一冊です。
中学生高校生のみならず、
大人の私たちにこそ役立つ内容です。
図書館へ行って、読んでみませんか。
第1章だけでも。

(2020.2.26)

Free-PhotosによるPixabayからの画像

【岩波ジュニア新書はいかが】

created by Rinker
¥968 (2024/05/19 02:32:59時点 Amazon調べ-詳細)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA